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「有利」と「不利」

 就労ビザは、正しくは「Non-Immigrant(B)」といいますが、直訳すると「非移住者(ビジネス)」ということになります。「非移住者」というのは、わかりやすくいえば、タイ国籍を持っていない者、永住権を持っていない者を指し、タイ国籍を持っていない、あるいは永住権を持っていない者が働くことを目的としたビザが「Non-Immigrant(B)」です。
 「非移住者」は、留学とか、家族滞在とか、定年後、物価の安い国でのんびり暮らしたいとか、必ずしも働くことを目的としているわけではありませんので、「Non-Immigrant」にはBだけでなく、Oとか、Fとか、EDとか、いろいろあり、「非移住者」は、自身の滞在目的に従って、Non-Immigrantの中の該当するカテゴリーで滞在許可を申請することになります。
 「Non-Immigrant」にはB、O、ED、IB、F、M、Rなど、いろいろあるのですが、通常、私たちに関係しているのは、B、O、IB、この3種でしょう。
 「B」が一般に「就労ビザ」と呼ばれているもので、タイで働こうという場合、必ず持っていないといけないビザです。Non-Immigrant(IB)というのもあるのですが、Non-Immigrant(B)から派生したもので、基本的にはNon-Immigrant(B)と全く同じです。「IB」の「I」は、「Investment」なのですが、BOIが絡んでいる場合はNon-Immigrant(IB)、絡んでいない場合はNon-Immigrant(B)で発給されます。これは、最初にタイ大使館(領事館)でNon-Immigrant(B)を申請する際にBOIからのレターを出すか出さないかにすぎず、BOI企業かどうかということではありません。
 タイで就労しようとする場合、一般企業であれ、BOI企業であれ、タイ入国前にタイ大使館(領事館)にNon-Immigrant(B)を申請しておかなくてはいけませんが、通常に申請した場合はNon-Immigrant(B)が発給されます。BOI企業であっても、通常に申請し、Non-Immigrant(B)をもらい、それで入国しても全く問題ないのですが、BOIにはビザ発給協力要請というのがあり、「こういうことのためにこの人物をタイに入国させたいので、ビザがスムーズに発給されるよう、協力してください」というものです。だいたいほんの数時間でレターを発行してくれるのですが、このレターを提出してNon-Immigrant(B)を申請した場合、Non-Immigrant(IB)となります。
 最近では、タイ大使館(領事館)も厳しくなり、ノービザでの渡航履歴が多い場合、先に労働許可証を申請し、その受理票を持って来い、とか、タイ渡航の全日程について、会社からの休暇証明を持って来い(ノービザなので仕事ではなく、観光ということになりますので)、とか突っ込まれ、簡単には発給してくれないようになりましたが、このようなとき、BOIからのレターを出せば、そのようなものは必要なく、簡単に発給してくれます。タイ大使館(領事館)での申請に何の問題もなければ、IBなど不要なのですが、ノービザでの渡航履歴が多く、引っかかった場合は有効な手段ですから、覚えておくとよいでしょう。
 タイで働こうという場合、就労ビザであるNon-Immigrant(B)か、(IB)を持っていないといけないのですが、タイ人と結婚していれば、「O」のカテゴリーでも労働許可証を申請することができます。
 「O」というのは範囲が広く、駐在員の奥さんとか、子供とかもこのOですし、タイ人を配偶者に持つ場合もこのOです。定年後、タイでのんびり暮らしたい人向けに「リタイアメントビザ」と呼ばれるものがありますが、これもまたOです。
 タイで働こうという場合、通常はNon-Immigrant(B)ということになりますが、タイ人と結婚している場合はNon-Immigrant(O)でも労働許可証を申請することができます。タイ人と結婚していない場合、Non-Immigrant(B)に限られますが、タイ人と結婚している場合、Non-Immigrant(B)でもNon-Immigrant(O)でも、どちらでもかまいません。どちらでもかまわないのですが、一般企業の場合、Immigrant(B)よりもNon-Immigrant(O)のほうが圧倒的に楽です。
 Non-Immigrant(O)で労働許可証を申請する場合、資本金が100万バーツでOKとか、特例措置が適用され、Non-Immigrant(B)で申請するよりは、はるかに楽です。特に延長する場合がNon-Immigrant(B)よりもはるかに楽です。Non-Immigrant(B)の延長は、会社関係書類を大量に提出しないといけず、審査も厳しいのですが、Non-Immigrant(O)の延長は、基本的に会社関係書類は必要なく、夫婦あわせて月4万バーツ以上の収入があればOKです。月4万バーツ以上の収入がなくても、2カ月以上連続して80万バーツ以上の預金があればOKです。
 などなど、タイ人配偶者がいればかなり楽になり、私なども、タイ人のヨメさんがいたら楽になるのになあ、なんていつも思っています。ただし、あくまで一般企業での話であって、BOI企業では関係ありません。BOI企業では、Non-Immigrant(B)であろうが、Non-Immigrant(O)であろうが、全く違いはありません。
 印刷物やウェブなどでは「タイ人配偶者がいたら有利」と書かれていることもあり、現在持っているNon-Immigrant(B)からNon-Immigrant(O)に切り替えたがる人がたまにいるのですが、一般企業であれば、「タイ人配偶者がいたら有利」の「有利」の部分がダイレクトに享受できるので、切り替えたほうがいいでしょう。しかし、BOI企業の場合、切り替えるメリットなど、何もありません。
 駐在員としてタイに来て、タイ人スタッフとできちゃった、なんてのはよくあることで、籍を入れたあと、Non-Immigrant(O)のほうが有利と聞いたので、Non-Immigrant(O)に切り替えてほしい、という依頼を受けることもたまにあり、実際、昨年もお客さんからそういう依頼を受けました。
   一般にNon-Immigrant(O)が有利であるとされるのは、

●資本金が100万バーツでもOK
●タイ人従業員が4人いなくてもOK
●夫婦あわせて4万バーツ以上の月収があればOK

などの理由によります。
 BOIから認可を受けると外国人の就労面での恩典がありますが、申請すれば誰でもOK、無条件でOK、という性質のものではなく、BOIが認めれば、他の規定は関係ない、というのがその恩典の性質です。
 この恩典は、実務上では、

●BOIの最低投資額は100万バーツなので、資本金100万バーツで労働許可証が申請できる。
●タイ人と外国人の割合は関係なく、タイで就労する必要性が認められればOK。
●タイでの生活費をどうするのか(たとえば、日本本社から海外赴任手当を受け取っている、など)ということが説明でき、BOIが認めれば、タイでの給与は0でもかまわない。

 以上のように反映され、実際に得られるメリットは、Non-Immigrant(O)と変わりありません。
 一般企業では、確かにNon-Immigrant(O)のほうが有利なので、現在、Non-Immigrant(B)を持っていたとしても、Non-Immigrant(O)に切り替える意味はありますが、BOI企業では、すでに持っているNon-Immigrant(B)をわざわざNon-Immigrant(O)に切り替える意味はありません。
 Non-Immigrant(O)はあくまで例にすぎませんが、どのようなことであれ、「有利」といっても、すべての人に通用するわけではないと思います。「有利」と聞くと、誰しも本能的にそのとおりにしたがるものですし、逆に「不利」と聞くと、避けようとするものですが、「有利だから」といってそのとおりにしても、実際のところ、全く意味がなく、いたずらに無用な経費、労力、時間を費やすだけになってしまうかもしれません。場合によっては、「意味がない」だけでなく、「損失」を引き起こす場合もあると思います。逆に「不利」だからといっても、やはり各人の状況によっては、「利益」になることもあると思います。
 そもそも「有利」「不利」というのは、ある特定事項の比較で言うことであって、全体的な「利益」「損失」の一要因にすぎず、重要なのは、全体の「利益」「損失」なのですから、「利益」「損失」という大局から「有利」「不利」の個別事項を検討すべきではないかと思います。
 先のNon-Immigrant(O)を例にしますと、タイ人配偶者を持っており、これからタイで働こうとする場合、一般企業であれば、Non-Immigrant(B)よりもNon-Immigrant(O)のほうが有利であることは確かです。しかし、Non-Immigrant(O)のほうが有利だからといって、Non-Immigrant(O)で入国し、Non-Immigrant(O)で労働許可証を申請することが「利益」になるかというと、必ずしもそうとは限らず、夫婦関係次第では「損失」を引き起こすこともあります。
 たとえば、夫婦関係が冷めており、離婚の可能性をすでに自覚している場合、あるいはすぐさま離婚するつもりはないものの、いずれは離婚しようと思っている場合には、Non-Immigrant(O)ではなく、最初からNon-Immigrant(B)のほうが無難でしょう。
 最初にNon-Immigrant(O)で入国して労働許可証を申請し、さらにNon-Immigrant(O)を延長したとします。そして離婚したとします。Non-Immigrant(O)というのは、タイ人配偶者がいることで成り立っているビザなのですし、そのビザで労働許可証も発行されているのですから、離婚すれば、当然それらは失効し、1からやり直さなくてはならなくなります。ところが最初からNon-Immigrant(B)にしておくと、離婚しても、ビザも労働許可証も失効しませんので、痛くも痒くも何ともありません。
 Non-Immigrant(O)でないと労働許可証が申請できない場合は仕方ありませんが、Non-Immigrant(B)でも可能である場合、私はいつも、「失礼ですが」という前置きであえて夫婦関係のことを尋ねているのですが、離婚を視野に入れているという場合には、Non-Immigrant(B)のほうが無難です。
 労働許可証申請、ビザ延長という事項だけを見れば、確かにNon-Immigrant(B)よりもNon-Immigrant(O)のほうが「有利」ですが、Non-Immigrant(O)は、単独では維持できないという欠点がありますから、その「有利」を享受してしまったために、のちのち時間も経費も労力もかかる「損失」を引き起こすことになるかもしれません。一方、Non-Immigrant(B)は、単独でも維持できるのですから、プライベートで何が起ころうとも、タイでの就労に全く影響がないという「利益」を生み出すことになるかもしれません。
 Non-Immigrant(O)の「有利」が「損失」を引き起こすか、Non-Immigrant(B)の「不利」が「利益」を生み出すか、そんなことは、人それぞれの状況で変わるのですから、「有利」だからといってそのとおりにする、あるいは「不利」だからといってそれを避けるのは、短絡的な発想だと思います。
 もう1つ例を挙げますと、2015年1月からBOIの制度が変わりましたが、以前の制度では、恩典は地域別でした。さらに工業団地内か団地外かでも恩典が異なっていました。そのときよくあったのは、「工業団地外であれば、法人税免除期間が短くなって不利だ」です。確かに法人税免除期間という特定事項だけを見れば、工業団地内のほうが有利なのですが、だからといって、それが全体的に利益になるのかというと、そういうわけではないと思います。
 事業内容によっては、工業団地のような立派な工場である必要はなく、ちょっとした町工場程度で十分な場合もあります。工業団地内のレンタル工場と工業団地外のレンタル工場とどちらが安いか? 法人税免除期間の差とレンタル工場の家賃の差を比較したとき、工業団地外のほうが「利益」になる場合もあります。 法人税免除期間が長くなるという「有利」を享受しようとすれば経費が増えます。逆に法人税免除期間が短くなるという「不利」を受け入れれば経費が節約できます。どちらが利益になるのかは、各企業の事業規模などにより、異なってきますが、「不利」を受け入れることが「利益」になるのは、不自然なことではないと思います。
 「有利」「不利」と「利益」「損失」は全く別問題です。考えるべきことは全体の「利益」であり、特定事項の「有利」「不利」は、あくまで「利益」の一要因にすぎません。「有利」が実質上は損失を引き起こすことは、私たちの日常生活でも、多々見受けられると思います。
 たとえば、大安売りがあったとします。「大安売り」は、何が「有利」なのかというと、「通常よりも払う金が少なくてすむ」ということになるのでしょうが、その「有利」にこだわり、不必要なものまで買ってしまって「利益」になるのでしょうか? 子どももいないのに、安いからといって大量に紙おむつを買うバカはいないでしょうが、普段は気にならなくても、実際にその商品を目にすると、あればいいかな、と気になり始め、いつもよりもずっと安くて得だから、ということで買ったはいいが、結局、何の意味もなかった、なんてのは、誰にでも経験がある、というより、日常的なことではないでしょうか。
 「半額だから払うお金が半分ですんで有利」は、値段という特定事項についてのみ言っているだけで、半額だろうが、70%オフだろうが、タダではなく、お金を払うわけですから、その分、お金が少なくなるのは当たり前です。本当にその物が必要であれば「払うお金が半分ですんだ」は、残りの半分が「利益」になるでしょうが、自分には不要なものだったら、「半額であってもその分損した」ではないのでしょうか?
 「払うお金が半分ですんで残りの半分が節約できた」になるか、「余計な物を買って損した」になるかは、その人にとって、その物がどれだけ必要性があるかによりけりですよね?
 全く同じ銘柄で一升瓶とワンカップ、どちらが「有利」か? 一升瓶は1本2,000円、ワンカップは1個230円、一升瓶1本=ワンカップ10個、2,000円と2,300円、どちらが「有利」か? 言うまでもなく、一升瓶のほうが「有利」です。では、一升瓶のほうが「利益」になるのかというと、その人の飲酒スタイルで「利益」にはならないときもあるでしょう。
 たとえば、私のように、酒が好きだが酒に弱く、毎日100mlぐらいの場合、一升瓶のほうが「利益」になるでしょうが、毎日1合でやめておきたい場合、ワンカップのほうが「利益」になるかもしれません。
 毎日100ml飲めば、一升瓶は18日で消費されます。毎日1合飲めば10日で消費されます。しかし1日1合と決めていても、一升瓶であれば、ぴったり1合というわけにはいかず、ついつい「もうちょっと」となってしまうもので、7日で一升瓶がカラになってしまうかもしれません。しかし、ワンカップであれば、「もうちょっと」と思っても、新しい瓶を開けようとまでは思わないでしょう。つまり、ワンカップ10個の消費日数は、確実に10日になるわけです。
 一升瓶を7日で消費すれば、1日あたり285.71円、ワンカップ10個を10日で消費すれば、1日あたり230円、一升瓶は、値段は「有利」ですが、1日1合でやめておきたい人には「損失」になっているじゃないですか。
 一升瓶が有利かつ利益になるか、有利だが損失になるか、ワンカップが不利だが利益になるか、これもまた、その人の飲酒スタイルによるとしか言いようがないですよね?
 私たちの日常生活では、こういうことが溢れており、「有利」が「損失」を引き起こすこともあれば、「不利」が「利益」になるときもあると思います。「利益」か「損失」か、そこには自分の価値観も大いに関係しており、「有利」というのでれば何が有利なのか、「不利」というのであれば何が不利なのか、それを自分の価値観と照らし合わせ、「利益」「損失」という大局から判断することが大事だと思います。


従うべきは法律

 タイでは祝日が飛び石になっている場合、年初には平日としていながらも、いきなり政府から「この日は休日とする」という公示が出るときがあります。たとえば、ある月、ある週の火曜日が祝日だったとします。間の月曜日は、最初は平日としていながらも、この日は休みとする、として、4連休にしてしまうことがあります。こういうときによくある質問が「この月曜日は当初は勤務日だったのだが、休日扱いとし、休日勤務手当を出さないといけないのか」です。また、タイ人従業員も「この日は休日になったのだから、休日勤務手当を出さないといけない」と言ってくることが多いようなのですが、民間には、というより、別組織には関係ないんですよ、こんな休日。
 政府が勝手に「この日は休日にする」と言っているだけで、公務員が休みになるというだけのことです。公務員は、この日勤務すれば、休日勤務手当が受け取れますが、民間がこれに従う必要はありません。たとえば、顧客が何かの都合でいきなりある日を休日にしたとします。そんなとき、「顧客が休日にしたのだから、うちも休日にしなくてはいけない」こんなことを言うのと全く同じことです。
 そもそも、年13日以上の祝祭日を定めていれば、いつを休日にするかなんて会社次第で、政府のカレンダーに従う必要はありません。政府のカレンダーでは祝祭日であっても、その日は勤務日にすることもできますし、平日であっても、祝祭日にすることもできます。
 祝祭日はカレンダーどおりに定めなくてはならない、一旦はカレンダーどおりに定め、他の日にする場合は従業員から同意が必要、なんていう誤解もあるのですが、関係ないです。
 世間が休みのときに勤務し、世間が勤務しているときに休みにすると、家族、友人等との付き合いにどうしてもギャップが出てきて、従業員が嫌がり、人が集まりにくくなりますから、できればカレンダーどおりにしたほうがいい、というだけのことで、いつを祝祭日にするかは、会社が自由に決めることができます。一旦、この日を休みにする、として、他の日にする場合には、従業員の同意が必要になりますが、最初に決めるときには、従業員の同意なんて要りません。
 会社は、あくまで年13日以上の祝祭日を定めていればよく、政府のカレンダーに従う必要はありません。政府がこの日は休みにするからといって、民間もそれに従う必要は全くありません。
 数年前、公務員の大卒最低賃金が15,000バーツに引き上げられたのですが、このときよくあったのが「大卒の最低賃金は15,000バーツになった」という誤解です。タイ人従業員のほうからも、わかって言っているのか、本当にそうだと思い込んで言っているのかはわかりませんが、「大卒の最低賃金が15,000バーツに引き上げられたのだから、大卒全員の給与を上げないといけない」と言ってくるケースが多発しました。
 これも休日と全く同じで、法律で中卒以下はいくら、高卒はいくら、大卒以上はいくら、というように、学歴によって最低賃金が定められたのであれば、それに従わないといけないでしょうが、政府が勝手に公務員の大卒最低賃金を15,000バーツにしたというだけですから、民間には関係ないことです。
 政府機関とはいえ、一組織にすぎません。一組織がこの日を休日にするからといって、別組織が休みにしなくてはならないなんてことはないのですし、一組織が大卒給与を引き上げたからといって、別組織が同額に引き上げないといけないなんてこともありません。
 従うべきは法律であって、政府機関の内部規定ではありません。

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